August 1978
This issue was released close to a month-and-a-half before the airing, and serves as the general promotion. Character designs and comments from Osamu Tezuka, Seiji Okuda, and Hisashi Sakaguchi are included.
Blurb:
来たる8月26日から2日にかけて、初の24時間番組が日本テレビで放映される。日本テレビ開局25周年を記念したチャリティー・キャンペーン番組「24時間テレビ 愛は地球を救う」がそれである。番組全体の構成は、テレビの情報機能を駆使した映像百科番組②恵まれない人たちに愛の寄金を寄せる涙と感動のドキュメンタリーの二要素から成っている。この二つの要素を結びつけるのが「愛だけが地球を救うことができる」という番組のテーマだ。この番組でテレビ界初の2時間アニメーションが誕生!!!! その名も「10万年地球の旅・バンダーブック」。マンガ界の神さま手塚治虫氏が、創作する一大アニメロマンである。この作品は、番組のテーマを存分に生かし、ゆがんだ文明のために破滅寸前にまで荒廃した地球と、それと全く同じ性質の惑星でありながら、まだ美しい自然を保ち、平和な繁栄を続けているもう一つの世界を対比させながら、自然破壊への反省と愛の連帯を訴えている。SFブーム・アニメブームのなかで、手塚氏がアニメ「風と共に去りぬ」にしたいと意欲を燃やす超大作だ。物語の構成は第1部「宇宙放浪編」(24分35秒)第2部「原始時代編」(23分)第3部「地球未来編」(44分05秒)に分かれている。制作手塚プロダクション。「バンダーブック」の放映時間は8月27日(午前10時から12時である。
Osamu Tezuka Comment:
(Summary: Not much here other than Tezuka's thoughts on the overall audience, which he projected would be 70% children and 30% adults. Interesting.)
日本テレビからお話をいただいたとき、初の2時間番組ということで私も大変興味を持ちましたし、また、私が長いこと課題として訴えてきたテーマと一致することが多いので、ぜひとも、意欲的に取り組んでみたいと思いました。作品では、バンダーの強くたくましい心、マリーナ姫のやさしさ、ムズの明るさと活動力、そして全体にSF的なロマンのふんい気を持たせて、幼児からおとなまでおもしろく見せる構成をとりながら、人間連帯と、破滅的な文明にみずからをおとしいれている人間の無知無暴さとを追求してみたいと思っています。正味2時間の内容に、幼児むきの絵本的な部分、少年むきの劇画的な要素のほかに、おとなの鑑賞にもたえるだけの美術的な手法もとり入れ、家族そろって十分楽しめるものにします。全体のバランスは、こどもむき70%、 おとなむき30%になるかな...。
Tadahiko Tsuzuki (NTV Production Department):
世界で最も強いものは、空想力でしょう。なぜならそれが人の心を動かし、世界を変えるからです。とすれば手塚さんのアニメーションという魔法の鏡こそ、水爆より強力な平和の武器といえるでしょう。原始時代でも、100年後の未来でも、他の銀河系でもたちどころに旅することができるのですから。 子供のころ終戦の日の夢が「愛は地球を救う」というテーマで、みごとなドラマの世界を展開していくことに興奮したものです。世界中の子供から手塚さんへのメッセージ。「ありがとうご苦労さまでした!!!」
Seiji Okuda (Director):
久しぶりの手塚先生の作品なので、スケジュール的にはきびしいが、できるだけいい作品にしたいですね。ただ、ぎりぎりの日程と、現在のアニメ技術で、どれだけ手塚先生のイメージを忠実に再現できるかで頭を悩ましています。 コンタクトをとたくても先生が忙しすぎてね。また、先生と坂口さんのキャラクターをどう調和させるかが課題でしょうね。
Hisashi Sakaguchi (Chief Director, Character Design, Art):
キャラクターのデザインは大変苦労しましたが、手塚先生のストーリーが大変おもしろいし、それは全く苦痛ではありませんでした。 僕は昔から手塚先生の大ファンで、先生の作品はほとんど読んでいましたから、先生のイメージを一方的にではありましたが理解したつもりです。なんとかリアリティーのある、すばらしい作品に なってくれればと願っています。
September 1978
This issue is Animage basically doing a scavenger hunt around prduction that includes comments from Keiji Kaneda, Osamu Tezuka, Yuji Ohno, and Hisashi Sakaguchi. Topics include things relevant to each person, and other things such as how much sleep Tezuka was getting during production. Not much!
佳境に入り熱入る手塚氏
8月27日、10:00amのオンエアーをめざし、手塚プロは最後の追い込みに入った。「時間を最大限に使い、すごい!!と思わせる作品を作りたい」といわれる手塚先生は、雑誌の仕事をしばらく休み、「バンダーに全力投球!!!」との意気ごみをみせている。7月中旬の某日、編集スタッフは、不夜城の手塚プロダクションを訪ねた。以下はそのときのスタッフの方との談話である。午前1時20分をまわる。午後10時から始められた進行会議はまだつづくしめ切りに追われながらも会議の席上、何回となく笑いの渦がまいた。まだゆとりがあるのか、会議が現場の緊張感をときほぐす唯一の場なのか。スタッフの顔には現場ではみられぬやさしさがただよう。プロデューサーの金田さんに質問を.
あと放映日まで一カ月半ほどですが、進行ぐあいは?
「ええ、少しばかりおくれていますが、追い込めばなんとかなるでしょう。手塚先生のイメージどおりの作品を仕上げなければ・・・。 『バンダー」はテレビ作品であっても、劇場公開できるだけの質と内容を持った作品であることを前提にがんばっています。質の向上を願えば時間に追われます。だからといって、時間がないか質を落としてよいというものではありません。手塚先生のきびしいチェックのもとで、みんな一つ一つていねいに作っています」手塚先生のチェックはきびしい。原・動画から背景まで目を通す。時間が迫っているというなかで、目の前に上ってきた背景1枚を、金田さんと話の末に、すべてイメージを指定し、色をやりなおしにまわした。「先生は不完全と思われるものには絶体、首をタテにふられません。 100パーセント完全なものを望むのは無理なことかもしれませんが、なるべ100パーセントに近づけるよう努力は惜しみませんね。あれほどの情熱をぶつけられると、こちらも同じように答えねば・・となります」『バンダーブック』にかける手塚先生の情熱はすごい。先生に話をうかがう。
手塚先生は絵コンテをすべて手がけられたそうですが。
「絵コンテはシナリオを作るより早くすみますし、画面のイメージもすぐ伝わりますからね。シナリオやめ絵コンテかいちゃえということで、「やりました」
絵コンテ以外には?
「原・動画もやっています。原画のほうが300カットもあるんですよ、ぼくのぶんだけで。絵カット数が約1700くらいですから5分の1強ですね。動画も動物のシーンを中心に描いています。雑誌の仕事もたいへんだけど、こちらもたいへんだね」
雑誌のお仕事と平行して『バンダー』を進められているわけですね。 「いままではなんとか平行してできたんですが、ここラスト2週間ほどは、雑誌を休んで『バンダー』に全力投球です。その結果、多くの方にご迷惑をおかけすることになり、そのぶんだけでもいいものを手がけなくては」
睡眠時間は?
「一日平均三時間くらいですか。ふだんでも四~五時間だから、そんなにかわらないですよ」 作品の進行と時間のかねあいは。「たしかに、時間はもう少しほしい。しかし、時間がないからといって手を抜けない。かぎられた時間を最大限利用して、いかによいものを作るかです。情熱をかたむければ、見てくれる人も、ああこれは・・・とわかってくれると思います」
バンダーのポイントは?
「話は、バンダーが親を殺した犯人をつきとめ、かたきをうつという話になっていますが、そのなかにかくされた人間の欲望と自然環境の破壊の恐ろしさ。そして人間が目ざめれば、いまからでも地球を美しくするのにまにあうということ。それを訴えたいのです」このへんは「ブラックジャック」ほか、手塚作品にみられる一貫した共通テーマである。全身にバイタリティーをみなぎらせ、今夜も若いスタッフたちにまじり陣頭指揮を取る手塚先生である。その姿を見て、作画監督の坂口尚さんは「手塚先生の作品づくりにかけるエネルギーには負けますね。あの睡眠時間では、ぼくなどとうにつ「ふれていますよ」と語った。午前4時。空はそろそろ明けはじめた。作品のイメージを左右する音楽を担当される大野雄二先生をおたずねして、お話をおうかがいしてみた。
―—まず、お聞きしたいのは、作品用に作られる曲数はどのくらいに?
「全曲でおよそ60曲ほどになると思います。メインとなるのは20曲前後ですが、できあがっているのはテーマ曲など12曲だけです。ほかは画面ごとに挿入してゆく曲なので、絵が上がりしだい、イメージにあわせて作ります」
作曲されるにあたって、SFストーリーという点をかなり意識されましたか?
「いや、とくにSF作品だからと意識はしていません。 手塚先生の持っているイメージで作曲しましたから。内容も、ぼくのもっているサウンドにクラシック的なものを取り入れてみたり、劇中ではシンセサイザーを一部使用したりとまちまちです。シンセサイザーは使いすぎるとおもしろみがなくなるので、全体的にはふつうのサウンドで通しています」
作品の中における大野先生の特ち味は?
「無国籍というのがぼくの持ち味なのです。ミムールなどの曲ではヨーロッパのフランスふう、本編中にはロック的なものを、全体ではクラシック的になっています」手塚プロのスタッフのみなさんをはじめ、制作にたずさわる多くの方の熱気を、あらためて感じた取材であった。
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